【neurasthenia】



「あらら、ベタベタになっちゃいましたね、蒼葉さん」

　言いながら腹を撫でる手に、蒼葉の体はビクリと震える。

「いっぱい出たもんな」

　その場所を今度は熱い舌が辿る。

「…っ」

　もはや、声を上げる力もない。

「お風呂、入りましょうか」

「そうだな。…しょっ、と」

　合図をしたわけでもないのに二人同時に立ち上がり、
　トリップが蒼葉を抱え上げた。
　ウイルスが一足早く風呂場へ向かう。



「少し待っていてくださいね」

「全部、きれいに洗ってあげるから」

　まだ服を着たままの二人が濡れるのも構わず、
　全裸でいた蒼葉にシャワーを掛けて湯船へ丁寧に下ろす。

「……」

　ダルくて動かない体がふわふわと湯に浮かぶ。
　ともすれば沈んでしまいそうな感触が気持ち良い。

　何も、考えたくない…。


　が、そんな夢心地が続くこともなく。

　ほどなくして、衣服を脱ぎ捨てた二人が入ってきた。
　普段殆ど衣服を乱すことのない雄たちの体は見慣れない。
　けれど、そんなこともどうでもいい。

　二人が近付いてくることは判ったが、
　蒼葉は揺れる水面を見るともなく目で追う。

　と、それが大きく揺れて溢れ出た。
　ウイルスとトリップが蒼葉を挟み込むようにして
　湯船に入ってきたのだ。

　かなりの大きさのある浴槽だが、
　大の男が３人も入れば自然と密着する距離となる。
　この二人に限っては故意に、だろうが。


「さ、髪を洗いましょうね」

　正面にいたウイルスが泡を蒼葉の髪に…──
　そう認識するのが遅くて、抵抗するのが遅れた。

「──…いっ…！」

　ウイルスの指が泡ごと髪にかかり、激痛が走る。
　忘れていた感覚が引き戻され、顔が歪んだ。

「蒼葉、かわいい」

　後ろから覗き込んでいたトリップまでもが
　泡をいじるようにして髪を掻き回す。

「痛っ…、や…だ…っ」

　振り払おうとする腕にも力は入らず、
　パシャパシャと小さく湯が跳ねるだけ。

　それでは解放などされるはずもなく、
　４つの手が執拗に髪に触れる。

「まだ、かなり神経が過敏なんですね」

「邪魔者いなくなったから、延命措置もバッチリだし」

「セイさんとつながってるつもりですか？
　もうあの方のところへは行かせませんけどね」

「そうそう、蒼葉は俺たちのだから」


　二人で何かを話していたが、蒼葉には言葉など届かない。

　丁寧に、だが容赦なく髪を弄ばれ、
　痛みを通り越した神経が痺れてくる。

「…ふ」

　強めのシャワーで泡を流された頃には、
　麻痺したように全身が震えていた。

　湯の波打つ微かな刺激にさえピリピリと肌が疼く。


「おや。気持ち良さそうですね」

　全部解っているだろうに、わざと意外そうに呟き、
　ウイルスが湯船に沈んだ蒼葉の下肢を撫でる。

「っ、ぁ…」

　そこは確かに芯を持ち始めていて、
　痺れの中にほんの少しの甘さが灯る。

　しかし、つい先ほどまで枯れ果てそうなほどに
　搾り取られていたその場所に、新たな刺激は強烈過ぎる。

　バタバタと脚を動かして暴れるが、
　二人がかりで押さえられては動けるはずもない。
　それどころか…。

「あ、お、ば」

　トリップが吐息で囁きながら、
　耳朶と、それから髪を一房…咬んだ。

「ひ、…ぅ、っ…」

　濡れた髪は更に敏感になっていて、
　剥き出しの神経を激痛が襲う。

　あまりの痛みに背を仰け反らせると
　向かい合っていたウイルスに腰を押し付ける形になった。

「誘ってるみたいですね、蒼葉さん」

　言うなり、密着していたウイルスが更にグイっと腰を進める。
　と、湯の力を借りたものが簡単に蒼葉を割り開いた。

「っあ…、はっ…」

　そこも、先ほどまで代わる代わる二人を咥えていた。
　度重なる摩擦に粘膜が悲鳴を上げるが、
　湯の膜が少しだけ衝撃を和らげている。

　その代わり、何か入り込んでくるような違う圧迫感がある。
　ゆらゆらと揺れる水面に合わせるようにゆっくりと抜き差しが繰り返され、
　動く度にその違和感は増した。


「苦しい？　蒼葉」

　後ろからトリップが無理に蒼葉の後頭部を掴んで振り返らせ、唇を合わせてくる。
　力強い舌が歯列をなぞり、それからあやすように吸い上げる。

「ん、…ぅ」

　唇からどれだけ派手に水音が漏れようと、
　すべて水面の跳ねる音に掻き消された。
　呑み切れなかった唾液も湯船へ溶けていく。

　そうしてトリップの方へ引っ張られると姿勢が不安定になり、
　蒼葉の片脚をウイルスが肩に担ぎ上げた。

　大きく脚を開かれた状態だが、羞恥など考えてはいられない。
　湯船に沈みそうになり、辛うじてトリップの肩に縋り付いて留まる。

「すげー格好」

　侮蔑の言葉なのに、その声も顔も愉しそうに笑っている。

「かわいいですよ、蒼葉さん」

「早く代わって」

「もう少し待て」

「じゃあこっち」

　そう言ってトリップが蒼葉を抱え直し、
　おもむろに中心へと手を伸ばした。

「…っあぁ…」

　ギュッと掴まれて、撫で上げられた時以上の衝撃がくる。

「感じてるんですか？　…すごく、締まりますね」

　抑えたウイルスの声が妙に艶かしく聞こえる。

「ふぅん…どんな？」

　トリップが呟き、前に回していた手を
　あろうことが窪みのふちへ移動させた。

　湯の中でウイルスを咥え込んでいる場所を辿り…

「っ…あ！　ぅ…やめ…ッ」

　抽挿のタイミングに合わせて、爪先が蒼葉の内部へと潜り込んで来る。
　信じられない形に歪められた場所に、隙間から湯が忍び込んだ。

「や…だ、…も、ぅ…」

　感覚も麻痺したと思っていたが、
　その異様な感触は鮮烈に脳まで届く。


　訳がわからなくて、抵抗したいのに…
　でも…──できない。


「泣いてるんですか？　蒼葉さん」

　大きく腰を動かしながら上体を屈めて、
　ウイルスが蒼葉の目元を舐める。

「いい顔、してる」

　反対側の目元を、後ろから覗き込んだトリップも舐めた。
　そして、狭い部分を弄っているのとは反対の手で、再び前を追い上げに掛かる。

「ん…、やっ…あぁ…」


　快楽など感じていないはずなのに。
　その場所は力を失わない。

　体がおかしい。

　それから、蒼葉の目元を行き来していた二人の舌が
　どちらからともなく髪へと移動し…

　一際大きく突き上げるのと同時に、歯を立てた。

「──ッ、あぁっ…！」


　放った…のだろうか、
　もう何も出なかったのかもしれない。

　体の奥が痺れる感覚はあったが、
　湯に浮かんだ状態ではわからなかった。

　体の内部も同じで。
　ウイルスが動きを止めたので終わったのだとは思うが、
　ドロドロになっている内側では全てが熱い。



　荒い息を吐いてぐったりとトリップに凭れ掛け、体の力を抜く。

　と、ズルリと中を埋めていたものが出て行き、
　タイミングを見計らったようにすぐさま、別のものが侵入してきた。

「…っ、ぁ…」

　あまりの絶え間ない衝撃に息が途切れそうになり、声すら出ない。

「蒼葉、寝るには早いよ」

　背中越しに囁きながら、トリップがゆるゆると小刻みに腰を揺らす。


「そういえば、全部きれいに洗ってあげる約束でしたよね。…トリップ」

「ん」

　ウイルスが何かを呟き、トリップが頷く。その瞬間、

「…！」

　浮力に任せていた体に、突然、重力が掛かった。

　トリップが蒼葉を抱えたまま立ち上がったのだ。
　湯船から出るつもりらしい。

　勿論、埋まっている場所はそのままに。
　一気に体重がそこへ集中し、思い切り締め付けてしまう。

「はは、ちぎれそう」

　マイペースに言ってトリップがタイルの上に胡坐を掻いた。
　蒼葉もトリップの上につながったまま座らされる。

　正面ではたっぷりと石鹸を泡立てたウイルスが膝をついていた。
　その手はまっすぐに蒼葉へ向かって伸びてくる。

「はい、大人しくしていて下さいね」

　とても動ける状態ではなかったが、
　泡を掬った掌が胸の上を滑り、くすぐったさに身を捩る。
　すると、中を穿っているものとも摩擦が起き、更なる刺激となった。

「あ、ぁ…、ふ…」

　やがてウイルスの手は下方にも伸びる。
　泡で包み込むようにして、敏感な箇所へと触れる。

「う…、ぁ…」

　もはや反応など出来ない状態のはずなのに、
　焦れったいような微細な刺激が火種を煽る。

　これ以上は苦しいだけだが、逃れるすべは…ない。


　次第に下から突き上げられる速度も増し、
　蒼葉は上半身を支えることさえできなくなる。

　けれど、力を抜けば心得たように胸も背も支えられ、
　倒れこむことすら叶わない。


「はぁ…、…ぁ、…」

　刺激に耐えかねた蒼葉の体が、ビクビクと震える。
　もう、自分の体もどうなっているのか解らない。

　しばらくすると、トリップも動きを止めて大きく息を吐いた。
　ようやく見えた終わりの予感に、知らず安堵が湧き上がる。
　ほんの一時の解放だったとしても…。



　それから、抜け出ていった箇所も執拗なほど丁寧に洗われたが、
　抵抗する力は残っていなかった。




　体中に残っていた泡もきれいに流されたあと。

　先ほどまでの強引さが嘘のように軽く、
　二人がそれぞれ蒼葉の髪を手に取り唇を寄せた。


　それから、

「蒼葉さん。快楽も痛みも全部、
　俺たちが与えてるってこと…覚えてくださいね」

「早く落ちちゃえよ、蒼葉」


　ひどく優しく、悪魔が囁いた。



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